2347年

大丈夫

屍人荘の殺人 感想

 

『屍人荘の殺人』(著 今村昌弘)を読んだ。殆どフォロワーいなかろうがTwitterでネタバレを書くのは避けたく、普段ミステリー(推理モノ)を読まない人間にとっての素朴な疑問もあるので何となくエントリーにした。就活はしてない。

 

 

普通にネタバレをやっている。

 

 

 

 

 

屍人荘の殺人とは

 

 

屍人荘の殺人

屍人荘の殺人

 

 

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  21世紀最大の大型新人...デカい主語だ...

 

 何となく「このミステリーがすごい!2018年版」の冊子をパラパラめくって著者のインタビュー記事を読んだ。どうやらデビュー作と言えども結構 多種多様な賞レースに作品を応募していて、ついに職を捨ててまで臨んでいる、という執念めいた話が書いていた。その迫力に押され、金欠ながら購入してしまう。

 

 

 

以下ネタバレ

   

 

 

「今朝の密室談義の続きです。いくつかの密室パターンについて話しましたが実はずいぶん昔から、ミステリでは密室トリックの鉱脈は堀尽くされたといわれているんです」

 

「最近の作品の特徴の一つが、複数のパターンを組み合わせることで問題を複雑化することなんですよね」

 

最近流行りの、キャラクターの個性を前面に出し、恋愛や青春小説の要素もふんだんに盛り込んだライトミステリとも呼ぶべき作品群だ。

 

 

 作中のセリフであるがこの作品の根本を取り囲んでいる、そして発想の勝利箇所を示している。良かった部分以下3つほどまとめる

 

 

1: ミステリー小説に造詣のある主人公の一人称視点ゆえ、ミステリーの解説や、引用した文章のように、時にこの作品の作風自体に対する結構メタな文章が散見される。自分の場合はそれに助けられた。

 

密室ミステリーの定石を述べ、それと今事件の差異を指摘してくれた部分は「ありがとうございます」とか言いながら読んでいた。前提である”クローズドサークル”という単語すら意味を知っていなかったので…エレベーターに石像を入れることで総重量操作する云々の部分は「ゼルダじゃん」とか言いはじめた域で...とにかく助けられた。

 

綾辻行人の話をして、装丁画が遠田志帆という憎い演出も個人的には満足。

 

 

2: この本、重元というキャラがゾンビ映画のコンテクスト的な部分を長らく喋るのが補完にあたるように、序盤はまさしくB級ゾンビ映画お決まりの、一種の文法に沿っていた。

 

 ミステリ小説なのにちゃんと導入をゾンビ映画として活字で書いたの凄くないですか?そこそこ丁寧に100Pくらいまでやってましたよ。手癖の悪い醜男とギャルは勿論、主人公格の男が序盤に死も、最近では話が締まってくるし、御都合主義を取っ払っている、という印象を与えるための定石になりつつあると思う (大体は以降に行われる御都合主義を隠すベール的な役割な気がするけど)。

 

つまりは主人公格らしかった明智の死だが、籠城する前のパニックの中、死にゆく各キャラクターの1人として淡々と処理された気がするが、クドくなる手前だったし好みの問題では。どうでもいいが、オタクがゾンビ作品で生き残っているのは畑違いではあるにせよ学園黙示録を思い出しました。

 

3:  文体自体は本作品の一人称視点である葉村が毛嫌う『キャラクターの個性を前面に出したライトミステリ』に属している。多分この作品もシリーズ化するのだろうか、「戦前から存在している馬鹿デカそうな組織に立ち向かう才女」、「その助手みたいな冴えない男」という布陣、正しく昨今のライトノベルの構図に収まっている。

 

確か著者は電撃大賞にも応募していた気がする。自分は決して読書が上手い人間ではないので、ライトミステリーの会話のテンポ感なども含め、消化不良を起こさずに読めた。

 

それはそれとして、「会って間もない男に馴れ馴れしい女との絡み」を活字で読むのは言葉にしづらいが、何故か作品ごとに好き嫌いが分かれてしまう。比留子と葉村のイチャイチャは大体読み飛ばしてしまった。好みの問題。

 

 

以下、素朴な疑問

 

 

1:各キャラの関係性や変化の描写

2:終盤に唐突に出てきた主人公の熱血漢

3:訳わからんタイミングでのヒロインの執着

 

1: 単にミスリードを誘う為だったかもしれないが、高木が静村に何処か依存する理由、「お、女の感情か?」とか思ったけど結局は感情の理由はイマイチ書かれていない。その逆は、静村自体が復讐に駆られていて高木に目をくれていなかった、というあたりで腑に落ちる。あと名張が菅野に好意を持っていたのも描写が足りておらず何故こうなった感が強い。ゾンビ映画特有のシチュで吊り橋効果か何かがあったことにする。この作品はミステリでありゾンビ映画(?)でもあるので。

 

2: 結果的に盗まれた時計を取り返したことを隠すため、葉村の吐いた嘘や、犯人である静村とのエンカウント時の会話が突貫工事のように思え、あまり頭に入ってこなかった。

しかし、何よりも気になったのが、その直後に一時期に良くない意味合いで流行った主人公の説教節が発生。そして見開きで続いたので思わず本を閉じた。突如、熱血漢になるの、禁書目録か?トリックが発想の勝利だったのに、その栄光を濁るような...犯人の主張を論破ほどではないが、乗り越えるシーンなのに本筋から外れているような。強盗は許さないのに、背景はあるにせよ女孕ませ捨てマンは価値観を見るのははじめてだったので...

ミステリーなので各キャラの情緒とかあまり審査されないのか?とか思ったが『生存者ゼロ』(著 安生正)にも大体同じ感情を抱いた記憶がある。俺は何もわかっちゃいない。

 

3: 死んだ先輩ゾンビを前に「彼は、私のワトソンだ」なんて言うか?思わず「正気か?」って言った。もし、シリーズになったとして、この執着が作品の背景となり伏線となるなるにせよもう少し現実離れしない言葉で言ってくれ...それも好みの問題でしかないが...

 

 という各登場人物の情緒がなんかこんがらがって変な気分になるなど。トリックがいくら優れていても、それを構成する各登場人物の構成に違和感を持ってしまうと自分の場合だとダメになってしまうことが分かってきた。

 

以上素朴な疑問。班目機関が云々みたいなのはシリーズ化したら追うだろうし...

 

 

というのが諸々の感想、でも一日で読み切れたし惹きつけられる面白さがあった。

 

 

こんな記事を投稿しようか悩んでいたら大晦日になっていた。

今年から始めた読書だが、2017年に読んでいて特に好みだったのは

 

機龍警察 シリーズ『自爆条項』『未亡旅団』『狼眼殺手』(著 月村了衛)、

『ゲームの王国 (上)』 (著 小川哲)

『天使』(著 佐藤亜紀)

 

でした。2018年は就活をやります。